鯉の刺身

写真は金魚

いちごが好きでもあかならとまれ。

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いちごが好きでもあかならとまれ。
作者:雁 須磨子 (著)
 
 
あれは忘れもしない3年前の夏、私がまだ雑誌のデザインとかの仕事をしていたころ。
 あの頃の私は毎日社長に詰められており、心身ともにボロボロだった。
 
「3時に帰って5時起きよ!」な生活だったこともあり本屋にもブコフにもいけず、BLマンガもあまり読んでいなかった。
そんな折りに、手すきの時間にぼんやり見たAmazonのおすすめリストにぼや~っと現れたこの本を見た瞬間ぽちってしまった。
 
 
本をペラっとめくったときに出てくるラフな扉絵からして、二人の関係性と話の空気感がにじみ出ていてててかわいい。
ヘラヘラした男の子とちょっとナイーブそうにそっぽをむく男の子。
 
この2人本当にめちゃくちゃダサい。
 
よくこんなダサいエピソード思いつくな!?
と思うくらいダサいくて、BLとは思えないくらい笑ってしまう。
あれ、コロコロコミックの漫画読んでるんだっけ…?と危うく勘違いしそうになる。
でもそこがこの2人らしくていい。
 
 
子どもの頃からずっと一緒にいて(高校生なのに一緒のベッドで寝てたりする)
そのままの流れで当たり前のように恋愛の意味で好きになっていく、、
のだけれど、明美くんはちょっとブレーキをかけてしまう。
あれ、おかしくね?という
 
自分の心の変化に戸惑い、思い悩みつつも千紘をはっきり好きだと自覚するシーンは、
シチュエーション的には全く特別感のかけらもないのに物凄くドキッとさせられる。
 
何か決定的なきっかけや理由があって好きになっていくのではなく、
コップにゆっくり水を入れていってそれが溢れた時のような好き。
 
本当にいいシーンだと思う。ダサいけど。 
 
千紘くんは明美くんとは違くて飄々としている。(てかちひろくんのひろって漢字普通に漫画内で表記揺れしてて笑った。)
むしろ明美くんの思い悩む姿を楽しんでいる様子すらある。
雁須磨子さんの漫画の攻めの男子は「男同士?それがなに?」と受けの男の子の悩みをふっと笑い飛ばしてくれるような子が多いな〜と思うけど、そういう意味では攻めはこの子かな。
 
明美くんは意外と考えなしに行動していることが多いんだけど、
彼はちゃんと考えて行動しているとこがある。
多良見ちゃんの話とか。
 
そういう意味では彼もちゃんと二人の関係悩むって瞬間はあったんだろうなと思う。
その上でちゃんと好き何だろうな、この子の方が「好き」の自覚は早かったのかもしれない。
 
 
というか、
・ずっと友達だったところからの心境の変化に気づくor戸惑う、
・やっぱり女の子が好きなのでは?と思って女の子と仲良くしてみる、
・実家住み同士だから初エッチができなくて、かと行ってラブホにいく勇気もないから一泊で旅行してみる
 
などなどBLでは忠臣蔵並みのド定番展開が続くのだけれど、
何がどうしてこうなるの!?っていうくらいダサいオチがついてくる。
そしてそのどれもがすごく笑えてキュート。
 
個人的にはやっぱり熱中症でぶっ倒れて人様の家の畑の野菜食べちゃうシーンとか、
千紘くんが熱中症で病院担ぎ込まれたよ!って連絡うけて明美君が慌てて走るんだけど、
自分もぶっ倒れて病院送りになるシーンとかもう腹を抱えて笑ってしまう。
 
ずっとこの2人はバカをやっていくんだろうなと思うし、それをず〜っと見ていたくなる。
ナイーブな箇所もそこまで深刻になりすぎず、かといってドライにもなり過ぎず。
作者側とキャラ達の距離感の心地いい漫画だった。
 
 
…しかし一番ダッサいのは物語終盤に出てくるお泊り会の伝説のあのシーンだろうな。
 

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